キャリアカウンセリングをめぐる冒険その7「有機的アプローチ」

昨日は二十四節気の「穀雨(こくう)」にあたる日だったそうです。なので昨日の雨は植物が成長するための、実りの雨だったんですね。そのようなことを知ると、雨にもポジティブな一面を感じることができるから不思議です。

都会で生活をしていると季節や旬という感覚が失われていくような気がします。ただ暑いか寒いか、晴れか雨か、それくらいしか気にかける余裕がないのかもしれません。

だからこそ、二十四節気のように季節の分かれ目を気にかけ、おりおりの行事を楽しみたいなと思っています。節分には豆を投げたり、桃の節句にはひなあられを食べたり、そうした精神的な活動は私たちが人間であることを思い出させてくれるように思うのです。

有機的なアプローチ

昨日のブログの終わりには「有機的アプローチ」について少し触れました。有機的アプローチというのは、クライエントの部分や問題点に執着するのではなく、全体性や統合を目指すアプローチのことです。

人間はテセウスの船ではなく、魂を持つ生物だと私は思っています。キャリアカウンセリングの場面では、しばしばクライエントを「変わる・変えよう」という取り組みがなされますが、私は「変わる」というのは目的ではなく、あくまで副産物のようなものと思っています。

つまり、クライエントが自分の全体性を取り戻した結果、変わったように見えたり、実際に変わったとクライエントが感じたりするのです。それはクライエントの部分を取り出し、それを別のパーツに変えることとは大きく異なります。もしそうしてしまったら、「それは本当にクライエントと言えるのか?」というテセウスの船の命題に回答しなくてはなりません。

クライエントは変わる必要もないし、こちらは無理に変える必要もない。もっといえば、クライエントは成長する必要すら、本来的には存在しないのです。(もちろん、それでも心というものは成長を求めます)

ただ私は、クライエントがあるがままの自分と出会い、全体性の中でそれを感じ、拡散するアイデンティティーを統合することを支援します。その人がその人らしくあることが、自然で最も機能することだと信じているからです。

だからネガティブな人をポジティブに変えようとは思いませんし(そんなことをしたら、その人は別人です)、苦手なことを無理にできるように変えるよりは、得意なことをもっと十分にできるようになってほしいと考えています。

それはクライエントを部分に分解して別のパーツを取り付けるのではなく、クライエントの全体性の中に出現するその人がその人であるもの(魂)を認めることで、それこそが有機的なアプローチであると今は思っています。

時間なので、今日はここまで。