キャリアカウンセリングをめぐる冒険その9

この週末は小1の息子とプールにいったりゲームをしたり、のんびりと過ごしました。普段はメンタルヘルス領域で仕事をしていますので、オフの日には自分自身が意識してリラックスするようにしています。

とはいいながらもカウンセリングに関する本なんかを読んでいると、「うーん…」とまた考え込んでしまうので、そういう時には「いかん、いかん」と思って、ゲームのコントローラーを握っています。

先週はキャリアカウンセリングの目指すところなどについて書いたので、今回はもう少し手前について書いてみたいと思います。

カウンセリングの成功を決めるものはなにか

ところで皆さま、カウンセリングが上手くいくかどうかを決めるものって、果たしてなんだと思いますか。ロジャーズとジェントリンは、膨大なカウンセリングの記録音声を集めて、その冒頭5〜10分を聴いて、このカウンセリングが上手くいくか、そうではないかを予想するという実験をしたそうです。

その結果はどうだったかというと、冒頭の音声を聴くだけでかなりの確率で面談の成否を判定できたんだとか。冒頭10分じゃ、どんな技法もアセスメントも理論もまだ使う前の段階です。なぜ、そんな予想をすることができたのでしょう?

ロジャーズやジェントリンが聴いていたのは「クライエントの話し方」だそうです。クライエントが話す時に自分の内側を確かめるように話しているか、あるいは淡々と事実を客観的に話しているか、それが面談の成否に大きく関わっていることを突き止めました。

この話し方(自分へアクセスしながら話す=内臓感覚・フェルトセンス)ができる人は、カウンセリングで快方に向かうし、全くそれができない人は、やっぱりカウンセリングを続けても成果が出づらかったそうです。

これを見ると「え?じゃあ、カウンセラーの力量や技法、理論って関係ないの?」と思うかもしれません。それは恐らく、半分YESだと思います。カウンセリングは万能薬ではないですし、どんなクライエントにも効き目があるわけではありません。

特に強い自己表現を良しとしない日本文化の中では、「どうぞ自由に自己表現してください」と言われてもなかなか難しいケースも多いと思います。人と話すのが苦手なクライエントなら、そもそもカウンセリングという手法を選ばないでしょう。

だから、カウンセリングという手法を自分で選択できて、その場に参加し自己表現できる人というのは、こちらがあれこれしなくても、良い方向に向かっていく可能性をはじめから持っているのだと思います。

一方で他人から紹介されて、しぶしぶカウンセリングを受ける人、その中で自分の内面にアクセスできず、表面的な事実ばかりを羅列する人は、なかなか効果がでなかったり、効果がでるまでに時間がかかります。

カウンセリングの成否を決める半分以上の要素はクライエントさんにかかっているのです。もちろん、クライエントさんが能動的にカウンセリングに参加できるようにするのも、私たちの大きな責務です。そして、これこそが、カウンセリングにおけるコントロール可能な最も重要な要素だと思っています。

もう1つの要素「関係性」

カウンセリングを成功に導くものとして、もう1つの重要な要素こそが「関係性」です。これについてジェントリは次のように述べています。

セラピ ーにおいて関係性がもっとも重要であり、2つめに傾聴があり、フォーカシングの教示は3つめにすぎない

Gendlin

この言葉には大変な含蓄があります。私もそのまだ全てを飲み込めているわけではありません。残念ながら時間がきてしまったので、今回はここまで。明日は関係性について、書くはずだと思います。